鈍色
2012.05.18 Friday 08:15
鈍色(にびいろ)
平安より喪に服す衣の色ともされた濃い灰色
白でも墨でもなく 光と闇のあいだに
鉄が鈍る 研ぎ磨かれ鋭く冴えるも 錆び朽ちていくも
またそのあいだに
雲の出づる地の冬は 空も海も界なく 鈍色になる
真を写すものか色を重ねるものか
光を重ね そして闇にも光があることを
墨にも色があることを
そして
光の手ざわりをかんじて
ちいさな灯りのゆらぎをかんじて
‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥ ‥
上記は去年、写真展におまけ参加させていただいた折
自己紹介のようなものなんでもA4一枚!ということで書いた一文
ほとんど謎解き
鈍色を染めるとなると ヤシャブシの鉄媒染と書いてあっただろうか
古くから喪服の色でもあるという
青鈍 赤鈍 薄鈍‥色はひとつでなく 鉄の輝きが鈍る色とも
境界の色
この世とあの世 根の国の色
朽ち果てさる前の一瞬の静寂の色
くぐもった空を 鉛色とも鈍色とも
鉛色がうまれたのは近世になってからとか
帰らぬ戦いに向かった鉄の船の色ならば
またそれも「境界」の色だったのかもしれない
はじまりの世界は坩堝のよう 混沌として
やがて光と闇と分かれ 世界をつくり
いまはまたひとつになろうとしているのか
雲の出づる地の冬
車窓から見た景色
海と川の混ざり合う湖
天から降りてくる色
空も山も湖面も音も姿を消した
白く白く それでも 鈍色だと思った