鈍色 den/nibiiro








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1994年暮れ 冬の山陰の風景を見ようと
思いついたまま乗車切符だけ買っての鈍行列車の旅。

大晦日、夜行列車への乗り継ぎの時間合わせに向かったのは神戸。

三宮に降りたのは何時頃だろう。
観光なんてできる時間ではない。
軽めの夕食と朝飯の買い出しでもしておこうかと町を歩く。

クリスマスのなごりかニューイヤーの飾りか
旅の荷物を抱えて キラキラしたおしゃれっぽい店はどうだか
入ったのはアーケードともいえない飲食店の並んだ
定食屋なのか飲み屋なのか。
大晦日だというのにそれとも大晦日だからか
それなりに混んでいる。たぶん常連さんというかいつものというところか。
なんとか席をみつけ 背もたれもない丸イスで壁に寄りかかる。
駅へ戻る時間確認しながらなんとはなしに
やはりそれらしく天井近くの棚にのるテレビを見上げると
紅白歌合戦も半ば過ぎあまりゆっくりはできないか。

早々に食べ終え 少しの時間 三宮の駅を歩く。
古ぼけた壁、レンガ 好きそうといえばそのまま
それでも時間も遅くなり構内では灯りも少なく
いい感じだが 手持ちで撮るのは厳しいか 
まあ 自分の写真に明るいも暗いもないのだけれど。

「今回は目に焼き付けて また来ようか。」

そのまま 一枚もシャッターを切らずに列車に乗った。


東京に帰る。
2週間後。1995年1月17日。
母の誕生日のその日は忘れられない日のひとつになった。



もしあの場所にいたら。
なんであのときあの場所に降りたのか。
分かったことは「また」はないということ。

カメラに残ったのは斐伊川の水と砂と草の風景。






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